レッツゴーデベロッパー2012 THE NEXT 参加レポート
2012、6月9日。東北の地、仙台で開催されましたレッツゴーデベロッパー2012なるイベントに参加いたしました。
東京から東北新幹線「やまびこ」で2時間ほどで到着の後、(人生初となるSubWayなるファストフード店で昼を済ませ)イベント会場「エルパーク仙台」(高島屋5F)へ。
会場到着後は、そそくさと受付を済ませ、空いた席に座ってスマホをいじりながらtwitterで「とうちゃくなう」とか呟いたりして1つ目のセッションが開始されるのを静かに待っておりました。
プログラム
1. スタートアップならRuby on Rails!
藤岡岳之 氏 (株式会社 ラビックス)… Ruby 一筋10年、東北の地で
2. "足"を使ってリーンUX! -- 顧客開発インタビュー入門講座
樽本哲也 氏 (アジャイルUCD研究会)… UCDとはユーザ中心設計の略です。
3. 「継続的デリバリーが拓く新世紀」日本語出版記念 特別パネルディスカッション
須江信洋 氏、和智右桂 氏、高木正弘 氏、いまいまさのぶ 氏
1. スタートアップならRuby on Rails!
Ruby一筋10年、まだRailsが産声をあげるその前から、Rubyソフトウェア開発を続けてきた過去と、これからチャレンジしていくことについて聞いてきました。
10年の歴史… Rails1.0が世に出るその前、イベントの受付システムを提供する福島大ベンチャーとしてスタート。
イベント受付システムは一回限りの案件が多く、数多くこなしてもノウハウは蓄積されるものの、締め切りまで間もないタイミングでの依頼が多かったり、仕様の変更が頻繁にあったりとなかなか苦しかったそうです。("cgi.rb"をGoogle検索すると、トップに「cgi.rbがイケてない12の理由」などがヒットするあたり、今のRails開発と比較すると苦労が多そうな印象です。)
2006年にRubyカンファレンスでRailsを受講し、持っているサービスを全てRailsへ移行してからは、(ほぼ)100%Railsで開発したサービスを扱っているとのことでした。(cgi.rbに比べて開発時間が1/3になって、かなり楽になった!と聞いております)
Rubyの利点欠点… Railsでの開発こそ最速!とは言うものの、一応欠点も挙げておきましょうということでいくつか教えていただきました。
聞いてはっとしたのが、テストを沢山書かなければいけないということ。コンパイルのないスクリプト言語の特徴というか、「サービス稼働中に、普通に "method missing…" とかでてきますからね!」という言葉には、我が身を振り返ると身に覚えありという感じでした。
そのほか、Rubyが比較的簡単にかける言語だという印象を持たれることが多いが、実際のRails開発となると、むしろ初心者には向いておらず、慣れている人が早く書けるという感覚だということでした。私も、以前Railsでアプリ開発をやったりRuby on Railsが簡単というのは嘘 - 30 to 30を読んだりしていて、ある程度は納得でした。
THE NEXTということで… Web + 組込み。
長年ソフトウェアの開発を手がけてきた中で、Webは出来る、あるいは、組込みは得意だ、という人はしばしば見かけるが、両方できる人っていないんじゃないかということに気づき、1年ほど前からそれらを組み合わせたサービスの開発に着手しているということでした。
セッション中、そのようなアイディアの一つとして、津波警報機の制作についてお話いただきました。(東北の地ということもあり、先の 3.11 の体験が発想のきっかけとなっているとのことでした。)組込み基盤としてBeagleBoneや自作のMasamuneCape(仮)にLinuxを載せ、rubyアプリで気象庁のRSSを監視するというものでした。
組込みについては今後避けて通れないでしょ、というオーディエンスの声もあり、私も書店出よく見かける組込みキットなどで入門してみようかと…
2. "足"を使ってリーンUX! -- 顧客開発インタビュー入門講座
UCD(User Centered Design)コンサルタント樽本氏のセッションでは、よいUX(User eXperience)やUI(User Interface)を実現するために必要なプロセスとしてのインタビュー手法について聞きました。
”使える”ソフトウェアを作るにはどうしたらよいか、ということは常々考えることだと感じますが、今回は、むしろ ”使われない” ソフトウェアを作らない為には、という視点でお話いただいたという印象を受けています。
”使われない" システム作ってませんか?… というわけで、例えば2001年、森政権で提唱されたe-Japan戦略。今まで手作業で5分もあればできた申請書の作成を1時間かかって作成できるようになったシステムの事例など、結局だれにも使われないシステムの事例をいくつか聞きました。極端な例にも思えますが、アプリケーションの8割の機能はほとんど使われないという研究結果もどこかにあったような気がしますし、そういう例は身近にもあるものと思われます。
ある日アイディアが閃いて、アプリケーションを作ろうと考えた時、開発者として気にするのがCoolな画面やアクションのことだったり、どんな技術が使えそうかといったことかもしれません。ただ、画面(UI)の設計や技術の検討の前に、まず「その製品は、だれのどのような問題を解決するするのか?」についてはっきりした答えがあるべきでしょう、ということです。この質問への議論をしてなかったり、最終的に答えのない製品は、例えどんなにすばらしい技術の結晶であったとしても、結局”必要のない”製品に成り果ててしまうことになりそうな感じがします。
誰も使わないものを作らない為に、「手を動かす前に、足を動かして、仮説を検証せよ。思い込みや勘違いをくそう」、というのが樽本氏のメッセージです。足を動かして仮説を検証する、というのは、つまりインタビューをすることで、インタビューのやり方やその活かし方を講演の中で実演されているので、ぜひUstreamを…
3. 「継続的デリバリーが拓く新世紀」日本語出版記念 特別パネルディスカッション
人間には、人間にしか出来ないことをやろう… 最後にそう言い残して壇上を去る4名の講演者の言葉に感動しつつ、
継続的デリバリーと継続的インテグレーションとを混同していた過去に別れを告げました。
継続的デリバリーが出来ているかどうかは、
「稼働中のシステムのプログラムコードを1行修正し、本番環境に反映するまでにどれくらいかかりますか?」
に対してどれだけ短い時間を答えられるかに要約できると理解しました。(これから勉強します…)
つまり、ソースコードのビルド自動化(コンパイルやテストの自動化)だけでなく、ありとあらゆるところを自動化し、平穏な土日を約束しよう、ということだと思います。
ただ、講演者の方々ですら「継続的デリバリーは未来の話だよね」、「デプロイの自動化まではすぐ出来たが、その他は…」という感じで、実際のプロジェクトのさまざまな要因により、継続的なデリバリーをやるのは非常にハードルが高そうと言う印象でした。
なにはともあれ、「継続的デリバリー 信頼できるソフトウェアリリースのためのビルド・テスト・デプロイメントの自動化」を読むことにします。
4. プログラマを一生の仕事にできるビジネスモデルで目指す未来のビジョン
プログラマから経営者へといたる13年の道のりを往く中で得た多くの気づきやメッセージが凝縮されたセッションでした。
後日、セッション中に会場の参加者から投稿されたTwitterのつぶやきを確認したところ、最もTimeLineを加速させたのが倉貫氏のセッションだったと思います。
実は、2012年始まって間もない2月、東京にて開催されたDevelopersSummit2012へ参加した際も、倉貫氏の講演を聞きました。
今回のセッションはそのときの内容と同じものでしたが、当時、受け止めきれなかったメッセージも沢山あったことに気づきました。
※非常に早口で、刺激的な内容が盛りだくさんなので、聴講後の疲労感ではNo.1かとおもいます。(いい意味で)
DevSumi2012レポートの追記として…
SIerでプログラマが楽しくない理由の一つ… 顧客が開発と運用を異なる組織に委託する
開発への投資比重を重くみがちな顧客としては、運用を安くしてでも開発にお金をかけようとする傾向にある。そのため、開発と運用は別の組織に委託することになり、そこに開発者の苦しみが生まれるという話。
開発者は後に運用側へ渡される多くのドキュメントをも求められることになり、コードの質を上げるよりもそちらで苦労することになる。また、運用側も保守の難しいコードとドキュメントを突き合わせ頭を抱えるという事態になることもしばしば...
このような現状があることも、SonicGardenのビジネスモデルが必然性を持つ理由の一つかなと感じました。
会社は自分の顧客… オーナーシップを持とう
自分の勤める会社への不満、ありますよね?という話。会社にとってお金をもらうのは、顧客からであり、自分がお金をもらうのは会社から。という訳で、会社も自分にとってはお客さんという関係であると考えてみようということです。
普通、お客さんへの要求は「提案」の形で持ちかけるように、自分の会社への要求も、同じく「提案」という形で行いましょうということ。また、顧客に対しては細やかな態度一つにも気をつけるように、自分の会社に対しても常に平静に交渉しましょうということです。
こういった態度を徹底することで、ビジネスの感覚を磨くことが出来るし、自らビジネスを立ち上げるということも将来的な視野に入りやすくなりそうな気がします。持ちましょう、オーナーシップ。
サラリーマンとして…
- 現状に疑問を持つ
- 常に準備をしておく
- プレゼンスすること
- 仕事を楽しむこと
- 新しいチャレンジをすること
技術者として、黙々と仕事に向かうだけでなく広い視点を持ちましょうということだと思います。
社外や社会に向けて情報発信をおこなうことでこそ、常に自分の位置を確かめ、地に足をつけて将来を考えることができるし、新しいチャンスに出会える機会も逃さずつかみ取れるような気がします。
なんと、今回のセッションはUstreamに収録されています。(しかも地元のTV局の力を使い、かなり質の高い映像でみることが出来ます!)
しばらく後で見返すと、また新たな発見がありそうなくらい盛りだくさんなので、もし自分で周りが見えなくなってきたと感じたときに見直すとよいのではと感じています。
懇親会
実は、勉強会で一番大切にしているのが懇親会への参加です。
参加者の方とこの場で、始めて話すことも多く、今日のセッションについていろいろと話しながら振り返ることができます。また、参加者それぞれが様々な経緯を経てこの場に集まっていますし、そういった体験談などを気軽に沢山聞くことができるのは非常に貴重な経験だと思います。「体験談」って本当に貴重です。新しいこと、経験のないことをやってみようという意識も、こういった場でどんどん湧いてきたりします。
仙台の皆さん、講演者のみなさん、運営のみなさんほんとうにありがとうございました。
牛タン弁当、新幹線のなかで食べました。